日記に走り書きしてあったもののまとめです
いつもより多めに迷走しております

●キョンさんにベースを弾かせ隊  2009.06.19

手軽にキョンさん+ベースにもえる手順
1.まずはニュータイプ7月号のキョンさんでも見てどきどきしておきます。
2.そんでもって静かな部屋でイヤホンもしくはヘッドホンをします。
3.目をつぶってGod knows...を再生します。1曲リピートモードにしておくとよいでしょう。
4.すごい長門ギターの横、真ん中あたりで鳴ってるベースに耳を澄ましつつかっこいいキョンさんに思いを馳せながら脳内のキョンさんにベースを持たせます。 (聞こえづらいときはこちら) (ついでにこれも超すごいのでぜひ)

5.擦れた彼の指からよどみなく放たれ続ける重低音を、耳でというより頭の芯でとらえながら僕は無意識に身体を揺らしていた。録音された涼宮さんの力強い声と長門さんの稲妻のようなギターリフ、真ん中で刻まれるドラム、スピーカーから流されるそれらの合間を縫うように彼の掻き鳴らすベースが低く深く進む。眉をいつもより寄せて唇を引き結び、強い視線を手元にじっと向けながら彼はまるで機械みたいな正確さで休みなく弦をはじいていく。リズムに合わせて床を叩く、靴下に包まれた彼の足の裏がなんだか無性に好きだと思う。僕と壁に跳ね返る、角のないダークグレーの道路みたいな低い響きが、目の前の彼の指先から紡がれているのかと思うとやはり少し不思議な気がする。間奏に入ったところで彼は無意識のように舌を出して唇を舐めずりながら視線を右へ左へ鋭くすべらせる。普段あまり見ることのない彼のその表情を直視するのが何故だか気恥ずかしく、すばやく動く手元へと目線を逃がした。絶え間なく弦をはじく右手の指の先はよくよく見れば赤く荒れているようで、それなりに練習したという彼の言葉がその口調よりもずいぶんと重いものであったことが今更あらためてよく分かる。体でリズムを取りながら最後のサビを掻き鳴らす彼の瞳は高揚と興奮とできらきらというよりぎらぎらしていてとても綺麗だ。終わりに近づくほどに、彼の結ばれた口元は押さえきれないかのように楽しげに緩みだす。とうとう最後の音が長門さんのギターの下を通り抜けて低く伸びきった。部屋の中には静けさが戻るけれど、浅く息をする彼の呼吸音が僕にははっきりと聞こえる。おもむろに、脱力したようにうつむいていた彼が顔を上げた。肩を上下させながらまっすぐに僕を見て、彼は大きく息を吐き、苦笑いを浮かべると一言つかれたとだけ呟いて床に座り込む。僕は体育座りを崩して彼に近づき、お疲れさまでした、と笑いかけた。
「俺なりに頑張ったつもりではあるんだが、こんなもんでいいんだよな」
「ええ、むしろ充分すぎるくらいだと思いますよ。これほどであれば、涼宮さんのご期待には間違いなく応えられているでしょう」
 素直にそう賛辞を送ってほほえむと、なぜだか彼は途端面白くなさそうな顔をして僕の首裏に手をかける。激しい運動のせいか彼の手のひらはひどく熱く、力を込めて引き寄せられるとかさかさになった指の皮膚が擦れてくすぐったい。
「おまえな、せっかく人ががんばったんだからたまには俺が喜ぶようなことを言ってみたらどうだ」
 立てひざで座る彼の胸元に頭を押し付けられるような形にもっていかれてしまい、とりあえずそれをやんわりと押し返しつつ顔を上げると、彼は眉を寄せてつまらなさそうに唇を結んでいた。その表情が先ほどまで真剣にベースを鳴らしていた彼のそれとだぶって見え、僕はなんとなくおかしくなって喉奥で笑う。
「そうですね、格好良かったですよ。とても。あなたらしい音でした」
 笑い声に紛らわせてそう言うと、彼は勝ち誇ったように口角を上げ、ご清聴どうも、と今更少しだけ目線を逸らしてみせた。

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あえて無修正 は、はずかしい……
キョンに夢を見すぎていますが反省しません
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●やんでれでれなキョンさんの話  2009.09.03

 古泉を狭い部屋に閉じ込めて気が狂うのを待ってるんだ。俺に縋りついて泣いて助けてくれって言うのを待ってるんだ。僕にはあなたしかいないって怯えた顔で俺にしがみついてくるのを待ってるんだ。古泉はいいやつだ。古泉はかわいい。古泉は綺麗だ。だれにもやらない。どこにもやらない。だれの名前も呼ばせない。だれのためにも祈らせない。お前はお前のことと俺のことだけ考えていればいいんだ。お前にはだれもいらないんだ。お前にはだれもいないんだ。
 閉じたドアの向こうからどんどんと鈍い音がする。猿ぐつわ越しのくぐもったうめき声も。聞こえないな。大人しく諦めて静かにしてればいい。お得意だろうそういうのは。残念ながら俺はお前のためだけに無神論者になったんだ。なんにも聞かない。お前がお前のことだけで頭が一杯になるまで。お前がお前のこと以外なんにも見えなくなるまで。お前がお前のためだけに生きるようになるまで。そうなったらすぐに俺はこの扉を開けてお前を優しく優しく抱いてやるよ。お前が大事で必要で愛してるとか好きだとかいくらでもその綺麗な耳に囁いて吹き込んでくちづけてやるよ。なあ古泉、だから早く、お前の頭からお前以外がいなくなればいいな。立場も仕事も義務も憧憬も羨望も達観も神さまも機関も世界もぜんぶみんななくなればいいな。俺が好きで好きで仕様がないのはただのひとりの古泉一樹、たったお前だけだから。だから、お前がその狭い部屋で泣きながら俺の名前を呼び始めるまで、遠くでずっと待ってるよ。

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やんでれで超でれなキョンさん怖くていいよね!!
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●グローバルな夏休みが憂鬱な話  2010.05.17

「ご存知の通り、この世界はループしています。たとえ何が起きたとしてもリセットボタンが押されてしまえばなにも起こらなかったのと同じです。もちろん、だからと言ってなんでもしていいというわけではありませんがね。しかしどうでしょう、やり直すことができるだなんて、冷静に考えればこれは恐ろしいことです。たとえば僕が今日の帰り道に事故かなにかで死んだとします。僕の生命はそこで一旦失われるわけです。この場合でも、時間が巻き戻って八月十七日からやり直すことができるのなら、そうなると死んでしまったはずの僕は一体どうなるのでしょうか。死者の生き返りとは、これはまさに、神の所業に他なりません。別に僕を例に挙げるまでもなく、今回の八月十七日から今日までの間にだって、日本、いえ、世界規模で見れば実に多くの人が亡くなっています。おとといの水難事故のニュースに見覚えはありませんでしたか? しかも長門さんの言うこれまでの僕たち――SOS団の行動は、必ずしも同じではなく、シークエンスごとに異なる過程を辿っていました。結果は同じだったようですがね。しかし、そうなると本当に、涼宮さんを神とお呼びする他ないような気がしてきませんか? 人類、ひいては世界のすべてがこのエンドレスループの中で幾度も生まれ、死に、巻き戻り、また生まれてまた死ぬのですよ。繰り返しているんです。それこそ、一万数千回以上もね。たった一人の、涼宮ハルヒという彼女が、夏休みを終わらせたくないというただそれだけで、ですよ」
 いつかの野球大会でも聞いた言葉が呟かれる。
「……子供か、あいつは」
 既視感に、涼宮さんが硬球を打ち返す乾いた音が重なった。僕はずいぶん遠くなった記憶の通りに、なにも言わずにただ薄く笑ってみせた。
 彼の目は僕から逸れて、ケージ内の彼女へと向けられる。古くさい電飾とファンファーレ。びかびか光るホームランの文字を見て、彼女はとても得意げに、幼げな笑みを広げた。彼はそれを食い入るように見つめている。いとおしむように口元がほころぶのを直視する前に、僕は彼女の笑顔をまた思い出せるように目を細めて、うまく動かない唇を噛んだ。
「あんなのが神さまなんぞであってたまるか。お前の話は長いだけで要領を得ねえし、そもそも野暮すぎる。夏休みが終わんねえってだけの話だろう今回は。世界だのなんだの、そういうのはお前のお仲間と勝手にやってくれ。大体今は夏休みなんだよ。めんどくさいのは宿題の山だけで充分だ」
 そう言い切ると、彼は立てかけてあったバットを取って立ち上がった。彼の背中を見上げながら、僕は追いすがるように口を開いていた。
「では、この夏のうちに僕が死んだら、あなたは涼宮さんにささやいてくださいますか」
 彼の黒い瞳が、鋭角に僕を見下ろしている。アイラブユー、と唇の動きだけで笑ってみせる。星空の下の彼の表情と、彼女の無辜の寝顔が浮かんで掻き消える。こごった数秒が通り過ぎるまで待ってから、なんの感情も載らない一瞥だけを残して、彼は僕を置き去りにする。彼女の元へ、彼女らの元へ。

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古泉なんて心底どうでもいいころのキョンさんもいいよね!!
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●カトキフィギュア化待合室な話  2011.03.14
※射手座パロ 女子だけ戦闘員、男子は基地待機
※憂鬱Ⅵの閉鎖空間、神人登場直後の部室をご想像ください

 小さな丸い石を盤面にそっと置く音が、窓越しの轟音に掻き消されていく。また大きな機械が何光年も向こうへ飛び立っていくのだろう。パイプ椅子を軋ませて壁の時計を見上げるが、その針はどこの時間を刻んでいるのだかも分からない。夜か昼かも、俺は知らない。前時代的な室内の灯りはずいぶん前に焼き切れて、この部屋はその内に光源を持たない。外がいつだって煌々と光っているせいで、そんなものいらなくなってしまったのだ。
 盤面と同じ色の制服を着た古泉が、目深にかぶろうとした制帽の下から、無表情な笑顔で俺を見る。なるほど、古泉はもう石を置いたから、次は俺の番なのだった。黒の面を上にして、適当に白の隣へ並べる。隣の白を黒に塗り替える。もう何千回目だろう。どれだけ繰り返しても進まない時間は、飛べるようになった距離と反比例するようだ。
「退屈でしょう」
 かつての夜空の暗闇に、今はもうその面影はない。分厚いガラスのような透明の壁を一枚隔てた向こう側に、宇宙も星々も月を模した巨大な光があまねく照らしだしてしまった。ふたたび轟音。飛行機が飛ぶ。空のように宇宙を飛ぶ、宇宙船が飛んでゆく。眩しいしうるさいし、おかげで古泉が続きに何を言ったのか聞こえなかった。窓に細めた目を向けて、睨みつけようと試みる。窓枠と古い古いコンピュータと、埃をかぶった三角錐が逆光で真っ黒に見えた。今やだれも使わないこの時間の止まった物置で、俺たちはひたすらに夜や、朝や、夏や、冬が来るのを待っている。星が回るのを待ち続ける。
「そう思いませんか」
 最初からずっと上達しない間抜けな手を打って、古泉はくるくる慣れた指先で盤面を少し白くする。白は光を反射して目に痛いんだよ、お前はこてんぱんに負けてろよ。
「だれの話だ、それは」
 古泉は唇の端を面倒くさそうに持ち上げた。
「涼宮さんたちは今頃、前線に出ておられるでしょうね」
 自動的に眉間に力が入る。自覚はしても敢えて止めない。飽きの来ない定番のやり取り。こんなのは茶番だ。古泉の顔の右半分にだけ、またどこかの戦場へ発進していく機体を照らし出す強すぎる光が、おこぼれのような熱を与える。代わりに反対側にはブラックホールのような間延びする影を。古泉から見ても、俺はきっとそう同じように、紺色の制服の半分が闇に溶けているのだろう。
「いちばん退屈してんのはお前だよ」
 そして、いちばんイラついてんのもお前だろうよ。
 古泉は溜息のように呼吸して、疲れきった瞳で笑う。喉元が苦しいのか、ハイネックの制服を窮屈そうに引っ張って、白い瞼を閉じた。長机の上には積もった塵が浮かび上がっている。俺と古泉の座る場所だけが平らで、目印のように影なく光を跳ね返している。
「お前にできることなんてねえよ」
 分かっていてほしいことを言葉にするのが億劫で、頭に手をやったら固い布地にぶつかった。こんなもんまでかぶってるくせに、俺たちはここで一体何をやってるんだろう。潰すように掴んでおろして、すぐに原型を取り戻そうとする帽子をわざわざ胸の前で握り直す。似たような形で、見送ったのはいつの話だったっけ。近づきすぎた宇宙には時間なんてなくて、「俺にだって、」ちっぽけな言葉はやはりまた、大きな光と音に掻き消されていく。窓を越えてわずかになった振動が、盤上の白黒をかたかたと揺らした。明確な影を描く古泉の長い睫がゆっくりと動いて、一瞬たりとも曇ることのない眩しさに瞬く。その陰影を、これで何百回目だろう、綺麗だと思った。
「お前がいなかったら気が狂いそうだ」
 古泉の口元が泥の中みたいにじっとりと笑みを形作る。そのままで、固められたように黙りこくる。こんな世界じゃ、目の前の人間が動かないと、本当に完全に時が止まってしまう。握り潰した制帽がぎしりとうめく。
 やがてぎこちなく、けれどなめらかな動作で俺をまねるように、古泉は帽子を取って心臓の前にかぶせた。
「いっそこのままここで、職務に殉じるのも悪くないかもしれませんね」
 趣味の悪い冗談とともに、首を傾けて目を細める。星を見るのが好きだとか言っていた、遠い遠いいつかの笑顔が頭のどこかにちらついて、思い出す前に掻き消えた。
 残念ながら、退屈は人を殺さない。ひっきりなしの光と音が、星々と夜空と秒針と、細い指が石を置くかすかな音を、ただ真っ白に塗り潰していく。

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最後の台詞に条件節withを補っておいてね!
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●小学館なキョンとハルヒの話 2011.10.07
※相対性理論の「小学館」を聴きながらお読みください

「スピリッツは?」
「……何?」
 狭苦しいあたしの部屋の中、床に寝転んで読み飽きた漫画雑誌をめくるキョンに問いかける。退屈を持て余した覇気のない目が、おそらく同じような目をしたあたしを見る。彼の眉間にしわが寄った。思い当るところがないらしい。
「何のことだ?」
「スピリッツ。小学館の。ビッグコミックスピリッツ? だっけ。週刊のやつよ」
 キョンが気だるげに起き上がって床に胡坐をかく。三週間前の週刊少年ジャンプを開いたまま、「ああ」と呟いて頭に手をやった。見飽きたポーズだった。
「ねえよ、んなもん。読んでる漫画ねえし、買ってないからな」
「なんでよ。ちゃんと買っときなさいよ」
「ないもんはない。ここにないんだから、もうどこにもねえんだよ。な?」
 諭すような口調。困ったような、諦めたような、どこか疲れのにじむ表情。やれやれ、という言葉が今にも聞こえそうで、けれどキョンはそれ以上何も言わなかった。カーテンを閉め切ったあたしの部屋の窓の外には今、なんにもない。地球がなくなって今日で三日、三週間眠って起きたら、何故だかそんなことになっていたのだ。
「……古泉くんなら絶対持ってきてくれたわ」
 手のひらを握りながらそう言うと、キョンが仏頂面で紙面に目を落とす。面白くもない、何の新しさもない、打ち切りになるはずだったろう漫画の見開きページで、主人公の男が武器を手に勇ましく叫んでいる。なにかを守ってみせるとか、この街が、世界が、だとか、大事な人たちがどうとか。頭に残す価値もない台詞を真顔で。
「あんたじゃ気が利かなくて全然だめだわ。つまんない」
「そうは言ってもな。俺たちしかいないんだからしょうがねえだろ? つまらんってのには俺も同意だ。ヒマすぎる」
 重みのない言い方をして、キョンはあたしの部屋をぐるりと見回した。我ながら特に面白いもののない部屋だ。勉強机、ベッド、無地のラグマットの上に折りたたみ式のローテーブル、みくるちゃんからもらったお茶を入れたティーカップ二つにティーポッドひとつ、服の詰まった棚、それからさして大きくない本棚。並んでいるのは読み古しの本ばかりで、この広大な退屈をしのぐにはあまりに頼りない。有希から借りていた分厚い本ももう読み終わってしまった。しかも返しに行くことができないから、新しいのを貸してもらうことさえできない。
「外に出たいわ。家に閉じこもってたって何にもならないもの」
 キョンは遠い目をして、光ではなく景色を遮るためのカーテンを眺めている。見渡す限り、この家の他になにもない地球。なにもなくなるまでの三週間、大洪水だか大混乱だかに耐えるために、この家の扉と窓は外からも中からも開かないようになっているらしかった。最後の夜に、古泉くんがそんなことを言っていた。正確には、古泉くんがキョンにそう言っているのを、あたしは夢うつつに聞いていた。古泉くんはあたしには、今日から三週間どうか眠っていてください、としか言ってはくれなかった。ひきつったような顔で笑う彼の穏やかなお願いを、祈るようにあたしを見つめる瞳を、キョンに何事かをしきりに頼み込んで、ゆっくりと部屋を出ていく後ろ姿を、あたしはまだはっきり覚えている。
「……ま、もう少しの辛抱だろ。そのうち何かが変わるさ。明日になれば太陽だって昇ってくるかもしれん」
 でもきっとそういうことを、あたしもキョンもそのうち覚えていられなくなるんだろう。あたしの目を見て、キョンが力なく笑う。希望的観測というよりは、まるでそうなると知っているような口ぶりだった。いつかの春に見た悪夢のことをうっすらと思い出す。新しくて楽しい世界が始まりそうな、胸が高鳴る、それはそれは酷い悪夢。
「SOSって、どっかに発信できないかしら」
 薄暗い部屋で、あたしは低い天井を見上げる。
「救助信号を出したとして、それで宇宙人が見つけてくれればいいんだがな。未来人でも、なんなら異世界人でもいいけどよ」
 乾いた笑いと共に、キョンがつられて上を見る気配がした。ページを押さえる手を離したのか、開かれていたジャンプがばたんと閉じる音がした。
「スピリッツ持って、古泉くんが来てくれたらいいのに」
 ここにないんだから、もうどこにもねえんだよ。キョンは同じ言葉を軽々と繰り返す。分かっている。ここにいないんだから、もうどこにもいないのだ。あたしの見知った、見飽きた、つまらない、平凡な地球はなくなってしまった。
「……退屈だわ」
「まったくだ」

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キョンさん特にジャンプ派じゃなさそう…
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